「打ち込める仕事」への憧れ
父も母もともに仕事に熱心に取り組んでいる姿を幼いころから見てきて、「打ち込める仕事っていいな」と思うようになりました。実際には、一生懸命働いてくれている両親の横でいつまでも遊んでいられないという気持ちがあったような気もしますが・・・。歴史小説が好きだったので、漠然と「日本全体に関わることがしたい」という思いを抱いていました。官僚を志して東京大学に進学しましたが、このころはちょうど「官僚汚職」が取り沙汰された時期で、かつて抱いていた「憧れ」も次第になくなっていきました。大学2~3年生のころは、将来やりたいことも今打ち込むべきことも見えず悶々とした時期を過ごしていましたね。
大学時代のケーススタディを通して経験したショック
ネットビジネスを始めたきっかけは、学3年のときに入った経営戦略のゼミでした。そこではいろいろな業種のケーススタディを学んだのですが、なかでも特に興味を持ったのがIT業界の事例です。マイクロソフトやデルなど、当時の自分と変わらない年齢の人たちが少人数で作った会社が、時を経て世界的な起業に成長し、グローバルに競争していることに感銘を受けました。ちょうどその頃はアマゾンやヤフー、楽天などが成長しつつある時で、「かつてパソコン産業で起きたことが、今はネットサービスの世界で起きているのだな」と思いました。ある意味ショックを受けたとも言えるかもしれませんね。
学生起業家としてデビュー
そこで、自分でもなにかできないかと考えて、求人サイトの「Find Job!」を開設しました。アルバイト先で人事の人から「求人雑誌の掲載料が高い」という話をよく聞いていたし、求人情報は検索性が要求されるので、インターネットとの親和性も高いと思ったのです。最初はブランドも信用もなかったので、求人情報を集めようと企業に電話しても大半は断られました。でも2、3か月後くらいには求人情報を出した企業から「反応があったよ」と言われるようになり、手応えを感じましたね。そして次第に求人情報も増えてきてうまく好循環の波に乗り、イー・マーキュリーとして法人化を迎えることとなります。
アメリカ発のITの流れを変える
その後、オークション事業の失敗を経て、2004年にSNSサービス「mixi」を開設しました。これは当時、海外で出始めていたSNSサービスに新鮮なおもしろさを感じたからです。ただ、それまでのSNSは2~3週間使うと人脈も大体つながってしまって、それ以上やることがなくなってしまうんですね。そこで、つながった人同士が日々便利に楽しく使い続けられるように、コミュニケーション機能を充実させたSNSサービスとしてmixiを作りました。mixiは人と人とがつながった骨太なネットワークインフラに成長していく可能性を秘めており、これからは海外にも通用するブランドを目指してグローバルに展開していきたいと思っています。ネットやITの歴史を振り返ると、MicrosoftやApple、Yahoo!、Googleをはじめとして、いろいろなサービスがアメリカ発のもので席巻されてきている現状は否めません。私はその流れを何とか変えたいという思いとともに、これからは世界に通用するプロダクトに携わっていきたいもしくは育てたいと考えています。